前回、よし書くぞ!と気合いを入れたのですごくマジメに書きます。
スペシャリテ、という言葉をご存知でしょうか?
飲食店においてスペシャルな料理、いわゆる看板メニューや名物料理のことです。
いわば料理人の名刺代わりになるような一皿。
そのスペシャリテなんですが、オープン当初からずっと考えています。
ずっと考えた末に今のところうちにはそれが無いんですね。
スペシャリテがあれば、どういう店なのか何を食べられる店なのかわかりやすくなって、宣伝しやすくなって、その料理を目当てにお客さんが来てくださる、といいことづくめ。
何かそういうのあるといいんやろうな。でもやらない、出来ない。
今回はそのあたりの事を書きたいと思います。
(画像はイメージです)
まず、やらない理由。
きっかけは15年以上前に遡ります。
調理師学校を卒業後、イタリアンの店に就職し、日々激務に追われながらもやる気のある若者は「勉強」と称して少ない給料と休日の大半を飲食店の食べ歩きに使っていました。
とある料理雑誌でとあるイタリア料理店が目に留まり、そこに掲載されていた料理を求めて一人で1時間半ほど電車に揺られて店に向かいます。
その料理は自家菜園の野菜を使った素朴な一皿でした。それがめちゃくちゃ美味しかったんです。
当時20代前半、珍しい食材や高級食材・流行りの料理などに目が行きがちな時期でしたが、その時の人参や大根やジャガイモなど普通の野菜の美味しさに感動したことが、今の料理の方向性を決めた理由のひとつだと思います。
その感動を共有したくて人を連れて再度その店に行ったんですが、その時には例の野菜料理はありませんでした。
雑誌に載るほどの看板メニューだからいつでもあると思ってたんです。
他の料理も美味しかったし、自家菜園なので採れない時期もあるのは今思えば当然なんですが、肩透かしをくらったような、胸にぽっかりと穴が空いたような、不完全燃焼な感じで帰ってきたのを今でも覚えています。
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本来はその野菜料理もそれ以外のどの料理も、作り手のシェフの中では優劣無くどれも自慢の逸品のはず。
でも料理雑誌で取り上げられたことでその料理が一段上になってしまった。
雑誌を見なければ僕がその店に行くことはなかったと思うので、宣伝効果を考えると難しい話ではあるんですが、目当ての料理が無かった時にこんなにガッカリさせてしまうくらいなら僕は特定の料理にスポットを当てるのはやめておこうと思いました。
…すみません、長くなってしまいました。
続きはまた後日。